コーヒーハウスハードボイルドオクトパス

暗号通貨やパソコン,電気,カメラ,写真,素人経済社会学などをテーマに記事を書きたいと思います.

「世界システム論講義」の書評と読書感想

久々の更新となってしまいました.

気にはしていたのですが,新型コロナウイルスに関わる社会情勢により,思考の余力を奪われてしまい良い文章が書けず...

ワイと同じように多くの人が新型コロナウイルスの影響で何かしらのダメージを被っているだろうし,今後どうなるのか全く先が見えない状況に大きな不安を抱えているだろう.

仮に明日状況が回復をしたとしても,元と同じ世界に戻るという保証もなく不安を助長する.

残念ながら(一部の人にはラッキーかもしれないが)ワイは元と同じ世界に戻るとはまったく思えない.

こういう不確定要素の多い時期に学ぶと良いのが歴史だろうが,どうもワイは年号を追ったり人の名前を覚えるのが苦手である.同じ傾向の人も多いのではなかろうか?

そこで,今回ワイが紹介したい本は「世界システム論講義」だ.

(また,書評かよと思った読者には大変申し訳ない気持ちである.以前から予告をしているUTXOの解説記事はほぼほぼ出来てはいるが,図の用意できていないのでもう少し待ってほしい.)

これまで紹介をしてきた本の中で最安であり,初の文庫本だ.

半分専門書でありながら持ち運びがしやすく,1100円+税というお得な本なので是非購入をして読んでみてほしい.

この値段とコンパクトさで現代にも続く世界の歴史の成り立ちがわかるなど,大変素晴らしいことではないか!

もっとも世界システム論という分野は社会学に分類されるそうで,所謂歴史の本という分類では無いようではあるが...

その社会学というのは,人間社会を色んな規模感で分析をしてそのメカニズムを解明する学問だと勝手に解釈をしている.(間違っていたら教えてほしい)

世界システム論というのは,近代世界を世界規模で俯瞰をしてその歴史的な動きを分析する事で,現代主流の国民国家をベースとした世界の構造がどの様に成立をしたかを解明する社会学のジャンルといったところだろうか..

本書はまさにそういった議題,米国の様な覇権国家はどういう経緯で出てきたものなんだろうか?そもそも国民国家という概念ってどこで現出したのだろうか?と言った疑問に答えてくれる形になっている.

さらに深刻なワイの疑問として(これはワイだけでは無いと思うが)南半球の国の多くはどうして比較的貧しい状態のままなのかという事だ.彼らが勤勉では無いからなのか?

本書では世界を一つの大きなシステムと捉え,このような地域格差世界システムにおける分業体制の中で生まれて来たものであると解説していて,ワイの印象としては単に運が悪かっただけだと感じた.

片や一方で(上記の米国の覇権取りに戻るが)覇権国家(本書ではヘゲモニー国家)という概念はいかにして成立したのか?これもまた運の部分があるとワイは思うが,以下のオランダの例の様に生産能力,テクノロジー面での優位性に起因する事は確かなようだ.

本書によると,初めの覇権国家であるオランダは付加価値の高い農業や当時欧州で圧倒的優位を誇った漁業能力を有していたらしい.

それに加えて,造船や蒸留,毛織物工業といったテクノロジー面においても優位性を保っていた.

その様に発展した(覇権)国家には必然的にお金が集まり,商業の中心から金融業に向かい自国通貨が基軸通貨となりその優位性を高めていく.

本書ではベトナム戦争までを米国覇権の時代としているが,一方で米ドルが未だに基軸通貨である事は象徴的である.

ワイが特に興味を持った部分は,その様な覇権国の中心都市では芸術文化と言ったものが発展するという話だ.これはワイの感覚にも完全にマッチする.

この文脈では,ワイには中国が今後覇権国家へと向かっていくのは間違いないと思える.彼らは生産の中心地であったし高度な情報技術を有している.いずれ,金融の中心も中国へと向かうのではないかと思うのだ.(既にそういう話も聞く)そして,芸術も中国へと迎ば,我々の美意識も西洋的なものからアジア的なものに変化するのではないかとワイは思う.

こういう大きな話に加えて,本書は局所的な文化発展に関しても詳細に触れられており,第七章の二節「コーヒー・ハウスと近代文化」は個人的にも本ブログ的にも大変興味深い話しであった.

1700 年代にはロンドンだけで数千件のコーヒー・ハウスが営業されていたと言われる.

これらのお店は,情報センターであり身分を超えた議論の場でもあった.そして,ロイズ保険や王立協会といった組織を産んだ事はあまりにも有名である.

コーヒー・ハウスは近代文化の発展の場として大きな役割を果たしたのだ!

話は変り,イギリスの産業革命やフランスの市民革命は近代国家の樹立には重要な運動であった事は間違いがない,しかし何故それは英国や仏国で起こったのか?これも中々難しい問題の様で,本書にも一見解として取り上げられているが,偶然なんだと感じた.

この様な話を多少前後しながら,様々な側面と粒度で解説されている.素晴らしくCPの高い本なのだ.

何より細かな年号や人物にはほぼほぼ触れられていない!

アムロ「こんな嬉しい事はない」

そして,最終章ではアメリカの覇権落ちやインドや中国の台頭といった話に向き合う事になる...

 

是非とも読んでいただき,これからのアフターコロナの世界を考えていただきたいのである.

 

では,今回はここまで.